結婚三年目

夫が無精子症だと、わかったのは結婚三年目の秋でした。

 

子供好きの夫の気持ちを考えると掛ける言葉が、みつかりません。

 

まるまる一週間ひとことも口をきかなかった夫が言い出した話は、とんでもない内容だったのです。

 

「子供が欲しいなら養子をもらえばいいじゃないの。

 

なにも、そんなことをしなくても」

 

「他人の子供じゃだめなんだ。

 

俺と血の繋がりがないと意味がない」

 

「育ててみれば、きっと、かわいいと思えるわよ」

 

「無理だ。

 

血の繋がらない子供を養う気にはなれない」

 

そうかもしれないけれど、わたしにだってできることとできないことがあります。

 

夫の弟と関係を持って、その子供を産むなんて、どうしてそんなことができるでしょうか。

 

「修ちゃん、まだ高校生でしょう。

 

それに、ずっと弟と思ってきたのに、わたし、できません。

 

修ちゃんと、そんなこと」

 

「おまえは子供が欲しくないのか」

 

「なにか、ほかの方法を考えましょうよ」

 

「ほかの方法なんてない。

 

俺と血の繋がった子供を作るには、これしかないんだよ!」

 

憔悴しきった夫の顔をみていると、それ以上突っぱねることができませんでした。

 

辛いのはわたしより夫ですものね。

 

わたしの何倍も、きっと、この人は辛い思いをしているんだわ。

 

そう思って、夫の言うとおりにすることを決めました。

 

「修司に本当のことを話すつもりはない。

 

おまえがうまくやってくれ」

 

「どんなふうにしたらいいのか、わたし、わからない」

 

「心配するな。

 

俺が全部、御膳立てしてやるよ」

 

数年前、高校生だったわたしは都会に憧れて、ひとりで東京に出てきたんですもの。